2009/10/02

芸術・食欲・バタバタの秋


友人であり、師であり、時として疫病神でもあるジョン・ワーウィッカー氏初のモノグラフ、「the Floating World: Ukiyo-e」が今秋出版される。400ページ、用紙4種、多色刷りのボリューム感で全ページ、ノングリッド。つまりタイプセッティング含め全てオリジナルデザインの大作なのだ。最初にサンプルを見たのは4年前でなんとも難産な本でもある。出版は高品質なアートブックで評価の高いドイツのSteidl。おのずと期待値は高まる。ここはジョン含めtomato、Underworldやその他の活動を総括せねば!ということで「IDEA」という孤高のデザイン関連雑誌に企画を持ち込み、144ページ総力特集をこのひと月まさにシニモノグルイで作っていた。当初、9月頭の入稿予定が半月過ぎ、連休を超え、、、まさに昨日ようやく本刷り作業に入った。なんの事故もなければ10月10日発売なので期待してほしい。それに加えて10月15日からは青山ブックセンターでオリジナルポスターと、本人セレクトによる芸術・デザイン・文学書籍を展示するイベントも仕込み中で、31日の土曜日にはグラフィックデザイナーの中島英樹さん、編集者の後藤繁雄さんを招いて座談会も予定している。とにかく時間のない中、多方面の方々にご協力いただきながら綱渡り状態で準備しているのだ。

毎年この9月、10月というのは、芸術の秋、食欲の秋ということもあって一年で一番バタバタする。今年も、身内では素晴らしき写真家・藤倉翼クンの個展があったり、音の魔術師・大黒サンが東京で展示したり、札幌国際短編映画祭も半月後に控えているし、デザイナーズウィークやら100%デザインやらデザインタイドやら、もう、ワァーワァーワァーといっているうちに終わってしまう。ぼくは結構出無精で滅多に出かけないのだけれど出掛ければ出掛けたで必要以上に楽しい時間を過ごしてしまう。この時期はそういう催しが連鎖的に続くので 11月には抜け殻のようになってしまう。

そんな毎日を過ごす中、最近、ぼくのなかで「なつかしい」という感情が急速に稀薄になっていることに気がついた。オープニングやその他の催しで久しぶりの人に会っても「なつかし」くないのだ。というのも、たとえば数年ぶりで会う海外の友人でもネット上のチャットやSNSサービスでやりとりしていて、日本に来る機内の食事がいかにひどかったまでをフォローしていたりするので、「久しぶり、最近どう?」というヤリトリをすっ飛ばして話ができる。別れるときも、また当分会わないであろうことはわかっていても割とカジュアルに「じゃ、また!」と別れる。そういう意味では距離感はないに等しい。今、目の前にいるかいないか、いないのであれば、相手が隣の部屋にいようとブエノスアイレスにいようとコミュニケーションという意味では違いはない。

最近急速な盛り上がり?をみせているtwitterもそんなボーダーレスなコミュニケーションを可能にしているツールだ。
あっちこっちでいろんな人がいろんなことをやっていて、オー、オー!オー?といってるうちにいろんな事が始まっては終わっていく。忙しない世の中のようにも思えるけど、居ながらにしていろんな話が聞けるのは楽しい。これって目次のない雑誌みたいだ。いろんなひとがその情報を独自に編集してまた次の人に伝わっていくリレーのような編集システム。商業雑誌の休刊が続いているが、これも単に景気低迷だけが原因じゃなくて、既存の雑誌メディアというフレームワークが耐用年数を超え機能不全をおこしているんだと思う。ちょうど蝉がさなぎから成虫に脱皮するような時期がまさに今!のような気がしてならない。フリーのライターをやってるひとたちは戦々恐々として、「今年の暮れあたりはライター村ができるね!」とか言い合っていたけど、結構こういう状態を楽しんでいるようにもみえる。ちょうど子供の頃、台風の日にチャリンコで走り回っていた意味不明の高揚感があるのだ。

自民党政権が終わり、既存メディアが衰退し、ぼくも今月またひとつ歳をとったけれども、なんか新しいことを始めるのにだいぶ風通しが良くなってきたような気がするゾ。楽しみ楽しみ。